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今回は公的年金の存在意義について触れたいと思います。
【憲法第25条ー生存権ー】
⒈ 条文
公的年金制度の存在意義を語るにあたって憲法第25条に触れない訳にはいきません。憲法第25条の条文は次のとおりです。
「第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
こちらは「生存権」に関する表明で、国民年金法や厚生年金保険法において「社会保障」の部分が根拠となる条文となっております。
⒉ 国民皆年金
国内居住の日本国民は20歳になると公的年金制度の国民年金に原則として強制加入することになります。( 高校を卒業して会社勤めや公務員として仕事を始めた場合には20歳未満であっても、俗に言われる2階部分の厚生年金に加入する場合もあります。)強制加入とすることで国民は政府より保険料を徴収されることにはなりますが、政府はその保険料に税を加えたものを財源として国民の老齢・死亡・障害を原因とする所得喪失時( 死亡の場合は遺族が対象 )における最低限の保障をするという考え方になっております。
【公的「年金」=社会「保険」】
⒈ 「保険」
「保険」とは何ですか?
完全に正確とは行かないまでも、皆様はこの質問の正解を答えることができるでしょうか?
まずは「保険」について考えてみます。ズバリ「保険」とは➀「保険者」に➁「保険料」を支払うことで、➂「保険事故」が生じた場合に④「保険金」を請求することができる制度のことを言います。
専門用語だらけで意味不明なので➀~④の解説を以下に記載します。
➀保険者 → 保険制度を運営する母体や組織のこと。
例)健康保険ー全国健康保険協会 / 生命保険―民間の生命保険会社
②保険料 → 「保険事故」が生じたときに「保険金」を請求するために払い込むお金
➂保険事故 → 「保険金」を請求する原因となった事象
例)健康保険—風邪をひいて病院を受診した / 地震保険—大地震で家屋が倒壊した
④保険金 → 「保険事故」が生じた時に受け取るお金
⒉ 社会「保険」
さて、「保険」について確認したところで、次は社会「保険」とは何か?です。
皆様は死亡保障 / 医療保障がある生命保険や自動車事故に備える自動車保険(少なくとも自動車賠償責任保険は義務ですよね!)/ 火災に備える火災保険 / 地震や台風をはじめとする天災に備える地震保険 他何らかの保険に加入し、保険料を払っているでしょうか?イメージできると思いますが、これらは民間の会社が契約によって運営する「保険」制度です。
一方で、健康保険制度や公的年金制度は法律で定められた社会「保険」です。
健康保険の場合で言えば、医療サービスを現物給付で受けているので実際に保険金として受け取るわけではないし、「保険事故」や「保険金」のイメージをしにくいと思いますが、本質は民間の保険制度となんら違いはありません。具体的には一般の皆様が「風邪をひいて病院で受診した」場合、窓口で30%負担していることかと思います。それは「風邪をひいて病院で受診した」という「保険事故」に対して残りの70%は実は「保険金」として給付されているということを意味します。
公的年金も同じです。老齢・死亡・障害という保険事故に対して、「年金」という形で「保険金」が給付される仕組みとなっております。「65歳になった」という保険事故に対して支給される老齢年金・「死亡した」という保険事故に対して支給される遺族年金・「障害が残った」という保険事故に対して支給される障害年金 といった感じです。
公的年金制度は社会「保険」の一種で、法律により政府が運営する「保険」制度となります。なお、社会保険の場合は現物支給の形態もあるため「保険金」とは言わずに「保険給付」という言葉を用いております。
【公的年金の存在意義】
公的年金の存在意義についてまとめると、
➀ 政府が運営する社会保険の一種である。
② 強制加入である。
➂ 国民の万が一の備えである。
④ 強制徴収される保険料も国民の生存権を保障するためのものである。
となります。
今回は公的年金の存在意義について触れました。嫌々ながら払わされている社会保険料にもきちんと意味があるんだよ、ということを理解して頂ければ幸いです。次回は「国民年金と厚生年金の関係」に関して書きたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました!
【参考文献】
・知りたいことが全部わかる!障害年金の教科書 / 漆原香奈恵・山岸玲子・村山由希子 /
(株)ソーテック社 / 2019年12月31日 初版第1刷
・精神疾患にかかる障害年金請求手続 完全実務マニュアル【3訂版】 / 塚越良也 /
(株)日本法令 / 2016年12月1日 3訂初版
・苫小牧市 福祉ガイドブック 2021年版
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